「……では、ソノ唯の一度でミリアの心を奪ったと言うのだな? 一体アレにナニをした! 二年前…。オマエに会わせたアノ日を境にミリアは急に大人び、そしてボクに冷たくなった…!」

 先程よりもやや興奮気味に声を上げ、その整った顔を歪めながらメルティオールは続ける。

「何故ボクと目を合わせない? 何故アレの唇からオマエの名が紡がれる…! 何故ダっ…何故オマエの事ばかり…っ」

「…!」

 ラインアーサは二年前の記憶を辿る。
 当時、まだ幼さが残るミリアム。メルティオールの側を片時も離れずに寄り添う姿は健気な印象を残した。

「フン、思い当たるコトがアルのダろう?」

「いや…。メルテはミリアム嬢に自分の気持ちを伝えた事はあるのか?」

「っな!? 論点を替えるナ! ミリアは産まれた時からボクの許婚と決まっていル! アレはボクのだ!」

「じゃあ、気持ちを言葉で伝えた事は…?」

「ッ! ふざけてルのか!? そんなモノ必要ない!!」

「そうじゃあない。いくら許嫁だからと言っても気持は……ちゃんと言葉にしないと伝わらない事もある。想っているなら尚更…」
(───そうだ、俺もちゃんと言葉にしないと)

 つい思い浮かべてしまう。