「っやめろよ! 俺は……俺はあんたがこの国の王子だろうと何だろうと、関係ない! スズは絶っ対に渡さないからな…っ!」

「……ふ」

 セィシェルの態度の変わらなさにラインアーサは苦笑した。いや、むしろ嬉しかった。
 今まで王族とわかった瞬間、手のひらを返す様に態度を急変させ媚を売ってくる輩を何人も見てきたからだ。

「何笑ってる! それに何が対等だ、むしろ俺の方が不利じゃあねぇか」

「いや、俺の方不利なんだ。まだ身分を明かしてない上に嫌われる可能性がある」

「は? あんな風に見せ付けておいてくれて言う事かよ! ……苛つく!」

 しかし、なおのこと噛み付いてくるセィシェルにラインアーサは思わずため息を吐いた。

「おい…! スズランは物じゃあないだろ。俺はスズランの気持ちを尊重する。本人が選んだ道なら何も言わずに受け入れる」

「へぇ、言ったな! あんたの正体を知ったらスズだって驚く。それに身分の差を気にするしうまくいくわけない…!」

「さっきも言ったが身分は関係ない。俺の母親も一般の街娘で孤児だった」

 セィシェルが一瞬瞳を見開いた。

「……だ、だから何だよ!」

「だから俺にとって身分は障害じゃあない」