「 ? でもそれは十歳までで、その後はいくらお願いしても一緒に眠ってくれなくなっちゃったの…。今はもう平気だけど、当時はすごく悲しかったんだから!」

 十歳まで……。それを聞いて一先ず安心する。だが、それでも胸の中の靄は晴れない。
 心に小さな嫉妬の火が灯る。次の瞬間、自分でも驚くほど情けない言葉を口にしていた。

「ふぅん……じゃあ今、俺とこうしててもスズランは全然平気って訳か…」

 嫉妬心丸出しだった。

「……へ、平気じゃないよ…っ、だって今すごいドキドキしてるもん。ライアも、、そうなの?」

「俺は! っ…俺だって、すごくドキドキしてるよ」

「……うん、ライアの心臓の音、すごくおっきい…」

「なんだ、バレバレ……かっこ悪」

 羞恥で身体が、特に顔が火照る。この体勢なのがせめてもの救いだ。情けない顔は見られずに済む。

「そんな事ないよ……わたしだって、もう心臓が破裂しそう…」

「そうなのか…?」

 自分だけではなかった。その安堵感から、思わず確かめる様にそっと片手をスズランの心臓の上へと添えた。小刻みな律動が外衣(ガウン)越しに伝わってくる。

「ひゃ……なにするの!?」

「ん…、本当だ。鼓動が早い……」