「うん。それでね、あの。わたしならもう平気だからライアがベッドを使ってね?」

「は? 何言ってるんだよ。俺は奥の部屋で寝るし、スズランがベッドを使えよ」

「でもこんなに広いベッドに一人で寝るなんて何だか落ち着かなくて。わたしの方が小さいんだし、長椅子(カウチ)で十分だよ」

「駄目だ。長椅子(カウチ)だと疲れが取れないだろ? それに毛布もないから風邪を引く。大人しくここで寝てくれって」

「だめ! それじゃあライアが風邪引いちゃう」

「俺は平気なんだよ…!」

「わたしだって大丈夫だもん!」

 スズランは意外にも頑固だった。

「なんだよ…。心配して言ってるのに」

「しんぱい、してくれるの?」

「…っ! お前に何かあったら、マスターやセィシェルの奴に何を言われるか分からないからな!」

 上目遣いのスズランと瞳が合ってしまい、照れた顔を誤魔化す為また少し意地悪な口調になった。

「そうなの? あ、だったらこのベッドとっても広いから、二人で一緒に眠ればいいと思うんだけど…」

「っ…は?! お、お前何言ってるか自分で分かってるのか? それこそ何かあったらどうするつもりだよ!」

「? 何かって、何…?」

「ああ、もう!!」

 真面目に聞き返して来るスズランのあどけない表情に、ラインアーサは頭を抱える。
 そうしてラインアーサの長い長い夜が始まった───。