「な! 何で泣くんだよ…!!」

「わかんないっ、わかんないよ…!」

 慌てて立ち上がりベッドの側面に屈んで顔を覗き込む。はらはらと涙を零す姿に心臓が大きく脈を打った。

「ああ……泣かないでくれ。そ、そうだ! 腹が減ったんじゃあないのか? 今お茶を淹れてやるから待ってろ」

「……お茶? そういえばわたし、お昼から何も食べてない…」

「なら尚更何か食べないとな」

 その拍子にスズランのお腹の虫が大きく鳴いた。

「っ!! ご、ごめんなさい!! ……はずかしいっ」

「っふは! 気にするなよ……くくくっ」

「いやぁーー! ライアの馬鹿ぁ!!」

 泣いていたのも忘れ恥ずかしそうに頬を染めて膨れる姿に堪えきれず吹き出した。するとますます頬を膨らませる。次々と表情を変えるスズランから目が離せない。
 ラインアーサはジルに焼き菓子を注文し、その間に香草茶(ハーブティ)を淹れ直した。それを美味しそうに飲み、黙々と焼き菓子を頬張る姿が何とも可愛らしい。つられて焼き菓子を一つ摘まむと口の中に甘い味が広がり、疲れが和らいでゆく気がした。

「おいしかった……です。ごちそうさまです」

「ん。さあ、そろそろ眠らないと。明日は朝早に宿を出るから」