「リー、早く来ないと、置いてくぞ?」


「や、やだって言ってんもん~!」



まだ舌足らずな言葉を一生懸命 話しながら、僕は慌ててパパの背中を追い掛けた。パパの隣でママが笑ってる。



今日は2人の お仕事が丁度お休みだったから、3人で遠出を してるんだ。お祖父ちゃんは長様で村を離れる訳には行かないから、一緒には来ていない。それが少し心残りなんだけど、お土産 沢山 買ってあげれば、きっと喜んでくれるよね?



普段 村の外に滅多に出ない僕にとって、たまの お出掛けは見るもの全てが珍しくて、辺りを きょろきょろ見ては立ち止まる僕に、パパは いぢわるを言うんだ。



慌てて ぽてぽて走って行って、パパの足に抱き付くと、パパは笑って抱き上げてくれた。白くて さらさらの髪が頬を掠める。



僕の髪は何でだか くるくるしていて、パパみたいに格好良くない。ママは僕の髪が好きだって言ってくれるけど、パパと結婚したんだからパパみたいな さらさらの髪のが好きなんだよね、きっと。



パパの首に抱き付いて頬擦りした時。



不意にパパが何かに気付いたように顔を上げた。



「……貴方……。」



ママも不安げに眉を寄せながらパパに近寄る。パパは僕をママに預けて、頷いた。



「……来る。何か、邪悪な者が。」



パパが そう言ったのと同時に、僕も何かを感じた。



正常に澄んだ神霊が漂っていた空気が、不意に どす黒い何かに染まって行く。



「ママ……っ。」



思わずママに しがみ付いた時。



それは、現れた。