「どうゆう事ですか!?」



大爺様に向かって、無礼と解っていながら、私は つい叫んでしまった。



此処2、3日、大聖堂にライネスの姿が無かったので、気になった私は大爺様に その事を訊いてみたんだ。



大爺様の話によると、ライネスは村で働き始めたのだそうだ。安い貸家を借りて、其処で生活しながら仕事を する。彼自身が自分で言い出したとか。



「此処で暮らしていれば、そんな事する必要は無いのに!」


「彼にも考えが在るのだよ。」


「考え?」


「毎日 忙しければ、過去の事に想いを馳せる事も無いだろう?」



大爺様の言葉に、私は何も言えなくなった。



確かに そうかも知れない。でも……。



「リホ。」



大爺様の蒼い瞳が、私を真っ直ぐに見つめる。



「良い加減、彼に依存するのは辞めなさい。」


「え……?」


「昔はライネスが其方に依存していたかも知れん。しかし今は彼は自立しようと している。家族を、一族を喪って、自分が どうすべきか考えた結果じゃ。だから其方も、依存するのは辞めなさい。


其方は この村の巫女なのだ。高貴な地位と、俗世と関わらぬ虚しさを持ち、生きていくのが、今の其方の生きる道なのだよ。」



大爺様の言葉に、私は床に膝を付いた。



解ってた。解ってたけれど、目を背けていた事……。