まもなく例の「精子が濃くて不幸顔」の城田先生がやってきて、

最初のホームルームが始まった。


ちなみに城田先生は四十代中年の男性教師で、ガリガリにやせて背が高く、

精子はともかくとして確かに幸が薄い顔立ちをしている。


ボソボソした声で一年間よろしく、といった内容の挨拶といくつかの業務連絡を終えてから、

先生は改めておしゃべりに夢中で全く自分の話を聞いていないB組の生徒たちを、ゆっくり見まわした。


「えー、一年間このクラスの皆で過ごすわけで……さっそくですが、まずはクラス委員を決めたいのですが」


誰か立候補はいませんか、という言葉に、一人の男子生徒が反応する。


「藤やれよ」

「やるわけねー!!」


マジやめろよ、と間髪入れずに藤が拒否する。

城田先生はどうしていいかわからない、という顔で曖昧に微笑したままだ。


しばらく、藤がやればいいだろとか、じゃあおまえがやれよとか、不毛な応酬が続いた。

まるで小学生のようなやり取りに、私はこっそりため息をつく。


こういう時に真っ先に、まあ悪気はないんだろうけど気軽に名前を挙げられてしまう藤が、正直気の毒だった。

人気者の宿命ってヤツなんだろう。

私がやられたら絶対イヤだ。


城田先生の顔色がだんだん悪くなってきたところで、わかった、わかったと藤が立ちあがった。


「このままじゃ押し付けあいで話がまとまんないよ。公平にクジで決めない?」