「とにかく病院へ」


石田はスクッと立ち上がった。
奈桜が目覚めたらすぐに行けるように予約してある。


「だから大丈夫だって。打ち合わせに戻るよ」


とても大丈夫そうには見えない。
何とか体を起こしてはいるが、顔はその笑顔が少し怖いほど引きつっている。
仕事に対して責任を感じているのは分かる。
が、この体では椅子にも座れないし、周りに気を遣わせるだけだろう。
だからと言って、首に縄をつけて病院に連れて行く訳にも行かない。
奈桜は行かないと言ったら絶対に行かない。


「分かりました。取りあえず病院は後日という事で。ただ、打ち合わせは無理です。今日は体を休ませて下さい。もう少ししたらご自宅まで送ります」


これ以上は譲歩出来ないという厳しい顔で石田が折れた。