「えっ、ここって、もしかしてＺの皆さんの事務所？えっ？そうなんですか？わぁ。すごい！なんか感激。あっ、おはようございます！」


真っ白なフワフワのセーターに薄いレモンイエローの短いフレアースカート。
ピンクの濡れたくちびるから軽やかに言葉がこぼれていく。
目をクリクリさせて見つめられると、男ならドキドキせざるを得ない。
甘い香りがふわ～っと漂い、そこだけ春のようだ。


「そうだよ。ここ、オレたちの事務所。っていうか、どうして、」


「あぁ、あのね、マネージャーの車がパンクしちゃったんです。それでそこの路肩に停めてスペアタイヤに履き替えてたら……。ここの方に『良かったら中で待ちませんか？』って声をかけて頂いて。最初、私の事は気付かずに声をかけて下さったみたい。優しいですよねぇ。寒いし、ほんと助かりました」


にっこりと微笑む姿に泉と奏も笑顔になっている。
男って、どうしてこうも可愛いコに弱いのだろうか。


「よく出来ました」


廊下の壁にもたれて腕を組みながら、冷ややかに心が呟いた。