「アハハ。見えたって事にしとくよ」


「大丈夫だよな？」


碧は何故か心配でたまらない。
嫌な胸騒ぎがする。


「奈桜も男だからな。あんな可愛いコがガンガン迫って来たらどうだろ？」


「据え膳食わぬは男の恥？梓さんがいるのに？」


「冗談だよ。大丈夫だって。そこまでバカじゃないよ。第一、奈桜には桜ちゃんがいる。桜ちゃんを泣かせるような事はしないだろ？」


「そうだな。桜ちゃんがいたな。最近の奈桜を見てたら、なんか男の香りがするんだよな」


碧の言葉に心は一瞬驚いて奈桜を見つめた。
そしてゆっくり頷く。
確かにそうだ。
最近、感じていた奈桜に対する違和感。
それは独身の『男』の香りだったのだ。


「マズイな……」


小声で心が呟いた。