「梓さん、疲れてます?」


バックミラーに映る梓を見ながらマネージャーの青木が心配そうに聞く。
青木はアラサーの女性で、ずっと梓の担当をしている。
甘い物に目がなく、ほんの少しぽっちゃり。
丸顔に童顔で可愛らしい雰囲気。
最初は友達のノリで、大丈夫か心配だったが、『女優 水無瀬梓』のマネージャーとしてもまれるうちに、仕事面は頼りになる存在になった。


「えっ?あぁ、大丈夫よ」


青白く、やつれたような顔で笑って見せる。
それが余計に痛々しい。


「スケジュールはゆったり目にしてるつもりなんだけどなぁ。やっぱり家庭と仕事の両立って大変ですかぁ?」


ゆっくり流れて行く見慣れた夜の景色。
梓は最近、いつも以上に口数が少ない。
青木は何かあるはずだと気になっている。