「ねぇ、茜、」


夕焼けを見ながらさとみが聞く。


「ん?」


「私って、悪いのかなぁ?」


紅茶を注いでいた指が止まる。
どう答えたらいいだろう。
すぐには返事出来なかった。


「いいの。いいの。答えなくて。悪いに決まってる」


アハハと笑ってごまかす。
それが妙に切ない。


「仕方ないよ。本気で好きになったんだから。国民的アイドルの雨宮奈桜を好きになって、ここまで来たんだよ。普通のファンじゃ絶対、出来ない。さとみは選ばれし者の一人なんだよ」


「選ばれし者って」


『ゲームの勇者みたい』と、ククッとさとみが笑った。


「全てにおいて、さとみは選ばれし者だよ。きっと、どっちが先に出会ってたかの違いだけ。一般論で言えば良くないのかもしれない。だけど私はここまでのさとみの努力を知ってるから。止めろとは言えない」