「雪……、降って来たね」


さとみは黙って頷く。
何となく、雪の降る音が聞こえる気がする。
恋人同士だったら、どれだけロマンティックな夜だろう。


「寒くない?」


「うん」


さっきから下を向いたまま、顔を上げない。
いつもの咲き誇る真っ赤なバラのイメージは消え、とろけるようなピンクの咲きかけのバラのよう。


「あの!これ」


一歩、奈桜に近付いて薄いピンクの小さな紙袋を差し出す。
細い指が寒さで赤く色付いている。


「えっ?」


「チョコレートです。あの、みんながいる所では渡すつもりはなくて。みんなとは違うから。あの、重く思わないで下さい。って、重いですよね。ごめんなさい」


「ありがとう」


奈桜はいつもの優しい笑顔で受け取った。