「どうしても………会いたくて」


少しずつ空気が張り詰めて行く。
冬の寒さのせいなのか、今の二人の関係性なのか。
息をすると喉の奥が痛くなった。


「あの……私……」


訴えかけてくる真っ直ぐな瞳。
これから何を言おうとしているか、どんな鈍いヤツでも分かるだろう。


「あっ、そっか。演技!だよね?演技の事で聞きたい事があったんだよね?ほら、ね?」


言わせちゃいけない。
絶対、言わせちゃいけない。
聞いちゃいけない。
奈桜は必死で話を変えようと試みる。
が、さとみの固い決意の表情が変わる事はない。


「奈桜さん……、」


真っ白な雪をうっすらとまとい、うるんだ瞳で見つめられると、奈桜さえ動けなくなった。