「あ、あの!」


校門の方を向いていた奈桜は、さとみの大きな声に驚いて振り返った。
いつもの可愛らしい笑顔は消え、さとみの切羽詰まったような顔が奈桜をしっかりと見つめている。


「どうしたの?」


一体、今の気温は何度なんだろう。
『クソ寒い』が一番ぴったりくる。
深い藍色の空を見上げればいつの間にか白くくすんで、ふわぁ~っと白い小さな羽根が一斉に舞い始めていた。


「私が頼んだんです。神川さんに。……奈桜さんに会いたいって。どうしても会いたかったんです。二人だけで」


『えっ』と言ったきり、奈桜は言葉が出ない。