「あ……、私、買って来ます。ちょっと待ってて下さい。すぐ戻りますから」


笑って奈桜を見た後、走り出そうとした。
が、奈桜の右手がさとみの左手を掴んだ。


「オレ、咽が渇いてるんだ。出来れば冷たいのが飲みたいんだけど。温かいのは一気に飲めないから」


振り返るさとみに奈桜は微笑みかける。
さとみの顔が一気に明るくなった。


「あ、じゃあ、これ……どうぞ」


冷たいミルクティーを取り出して渡す。
『ありがとう』と奈桜は受け取ると、『やっぱり』と思った。
さとみは温かいミルクティーを買って、奈桜を待ってたんだろう。
きっと、車から降りた奈桜は寒いはず。
だから温かい飲み物を奈桜に飲ませたかったんだ。
でも、せっかくの温かいミルクティーも待っている間に冷めてしまった。
さとみはいつから待ってたのか。
奈桜より一時間以上、早く終わっていたはず。