~伝える~
「着きました」
「えっ?ここ?何で、ここ?おかしいやろ?」
「奈桜さん、光さんの関西弁がうつってます」
「そっちじゃなくて。ここ?」
奈桜が疑問に思うのは、もっとも。
石田が車を停めたのは、奈桜の思い出の場所。
1年半ほど前に奈桜と梓が急きょ、婚約会見を行った小学校の運動場の横。
「はい。ここです。神川さんが指定して来た場所はこの運動場です」
相変わらず、淡々と言う。
奈桜は『ふぅ』と深く息を吐いた。
明らかに神川は何かを企んでいる。
奈桜は必死にそれが何か、探ろうと思考をフル回転させる。
「何のつもりだ……」
考えてもさっぱり分からない。
所詮、神川の考えている事なんてわかりっこない。
「もう遅いから石田さん、先に帰ってていいよ。ここから家は近いし。お疲れ」
優しい笑顔を見せて奈桜は車を降りて行く。

