「お疲れさまでした」
今日の収録を終えた奈桜にマネージャーの石田が声をかける。
「はぁ~。終わったぁ。何時?」
疲れた顔は見せず、今日も無事に済んだ事が嬉しそうに聞く。
石田は申し訳なさそうに腕時計を見る。
「11時半です」
「11時半?やったぁ。今日中に帰れる。石田さん、ありがとう」
今朝、起きた時には娘の桜はすでに学校に行っていた。
いつもの事で仕方ないが、まだチョコレートをもらっていない事が気になっていた。
きっと桜はバレンタインくらい、ちゃんと奈桜と顔を会わせたいと思っているに違いない。
「絶対、桜は起きてると思うんだ。少しだけ寝て、目覚ましかけて、そろそろ起きてくるはず。あいつって、そういう可愛いとこがあるんだよなぁ。娘って可愛いよなぁ」
さとみを見つめる光より目がとろけている。

