「奈桜さん、お疲れさまでした」


今度は甘く可愛らしい声が後ろから聞こえて来た。


「あっ、お疲れさま」


振り返ると、さっきまで一緒にいた若手女優の秋月さとみがにっこり微笑んで立っている。
茶色の緩くウェーブのかかった長い髪、パッチリした二重の目。
顔は限り無く小さく、薄いピンクの口紅は花びらのようにさとみの口びるを染めている。


男性人気No.1。
整形したい顔No.1。
そして。
共演者キラー。
………らしい。


「奈桜さん、缶コーヒー、もらってもらえませんか？間違ってボタン押しちゃって」


こちらを見つめて言った後、またにっこり笑う。
確かに可愛らしい。
こんなコにこんな風に言われて誰が断るだろう。
まぁ、たかだか缶コーヒー1本もらうだけだが。


「じゃ、頂く。ありがとう」


奈桜もアイドルスマイルを返す。