「フフフ。ほんと？なら、」


そう言うと、自分の口元を神川の左の耳にグッと近付ける。


「雨宮 奈桜の心が欲しい」


スッと顔を離すと神川を見つめてにっこり微笑む。


「もらえるかしら？」


甘いピンクの口紅にたっぷり濡れ感を出したグロスが光る。
さとみの全身から『女』の匂いがして来るような気がする。
神川の口元がフッと笑った。


「雨宮 奈桜の心かぁ。さすが、さとみちゃんはお目が高い」


さとみは『そうでしょ？』という自慢気な顔で神川を見る。


「フフ。さとみちゃん、この間、奈桜の携帯の番号、教えてあげたじゃない？」


あの、奈桜のごくプライベートな番号を教えたのは神川だったのだ。
この男なら、さとみのくちびるに惑わされてもおかしくはない。


「う～～ん。あれはね。まぁまぁかな？」