「これって、きっと撮影よね?」
近くの人たちが小声で話している。
万が一、撮影だった場合、自分のせいでNGになったら良くないと、さりげなく側の人と会話する。
「当たり前じゃない。雨宮奈桜と水無瀬梓よ。映画よ。きっと」
「そうよね?プライベートでこんな堂々と……」
「しーっ!声が入る!黙ってよう」
それを耳をそばだてて聞いていた周りの人たちは、一様に納得した。
そしてみんなさりげなく違う方を向き、エキストラを演じる。
あくまで自然に。
前にも。
こんな風景があった。
あの時と同じ。
違っているのは
二人が家族を築いている事。
同じ未来を見つめている事。
「梓さぁん、お取り込み中、誠に申し訳ないのですがぁ。あのぉ、もうそろそろお時間です」
申し訳なさそうに梓のマネージャーの青木が、頃合いを見計らって声をかけて来た。

