「あ、何か欲しいものある?ほら、帰って来た時。赤ちゃん、一緒だもんな。うわぁ。赤ちゃんかぁ。あ、だから、揃えておくもの。何かない?部屋もさ、桜とめっちゃ可愛く模様替えしとく」


楽しそうに想像しながら話す奈桜は誰が見ても幸せそうだ。
梓も今になってようやく心から喜べるようになっていた。


ほんとはもっと早くこうなりたかった。
こんな、明るい未来を話したかった。


「気が早いって」


「何かさ、赤ちゃんの事を考えるのって楽しいよな。ワクワクするっていうの?すっごく幸せな気分」


梓の右隣の椅子に座り、膝の上の右手を握った。
お互いの温もりが自然に体を巡る。
心地よいトキメキに梓の頬が赤くなる。


「出来るだけ早く帰って来る」


梓の言葉は決意表明のように聞こえた。
奈桜は笑って、握っている手をもう片方の手で軽くポンポンと叩いた。


「無理さえしなければいいんだよ。全力でやっておいで」