「イヤだ。奈桜さん、なんかカタイです。いつもの感じじゃないなぁ。あっ、もしかして近くに誰かいます？私からの電話、まずいですか？」


『面倒くさいな』と、心の中で奈桜はため息をつく。
一人で盛り上がろうとするタイプも苦手。
大体、こんな電話を待っていた訳でもない。
この電話は奈桜には用のないものだ。


「今、仕事中だから。また今度」


切ろうとするのを察知したのか、さとみの声が追いかける。


「あっ、ごめんなさい！あの、あのね、ドラマの事で聞きたい事があったの。ちょっと感情をどうやって表現したらいいのか分からない所があって。奈桜さん、時間作ってもらえないかと思って」


「それなら聞くのはオレじゃないよ。そういう事は……」


「時間作ってもらえませんか？」


奈桜の声にさとみの必死の声が重なる。