「あっ、奈桜さん?私♪」


「私?」


梓は『私♪』って言ったっけ?
えっ?誰だ?梓じゃないのか?


「はい。私です。今、大丈夫ですかぁ?」


「えっ?ちょっと待って。どちらさま?」


聞き覚えのない声に奈桜の頭は軽くパニックになる。
と同時に心の中ではすでに切ろうと決めている。


「あっ、ごめんなさい。突然お電話して。秋月です。秋月さとみ。奈桜さんですよね?」


「秋月……あぁ、秋月さん?」


言いながら頭の中は疑問符だらけになる。
なんで秋月さとみが奈桜の電話番号を知っているのか。
全くのプライベートな番号。
家族とメンバーとごく一部の人間しか知らないはず。


「何か用ですか?」


ちょっと距離を置いたような声で奈桜が聞く。