「撮影中はお世話になりました。ありがとうございました」
さとみが奈桜に向かって頭を下げる。
「えっ?……あぁ、ドラマ?いや、こちらこそお世話になって。ありがとうございました」
いったん立ち上がって奈桜も頭を下げた。
「そんな……、座って下さい。ほんとは打ち上げでちゃんとお礼を言いたかったんですけど。奈桜さん、すぐに帰られたから」
ドラマの打ち上げの時、奈桜はまだ仕事があるからと早くに帰っていた。
ほんとは何かを勘づいていたマネージャーの石田が、無理矢理、仕事を詰め込んだ。
奈桜はその事に気付いていない。
『ごめんね』と笑う顔が優しくて、さとみの胸は切なくなる。
もう、何かを奈桜から感じてはいけないと思うのに。

