「たぶん……、タイミングだと思う。うん。上手く言えないけど。お互いのさ、タイミングが合わなかったんだと思うよ。きっとそうだと思う」


「うん。そうだね。きっとそうだね」


奏は小さく頷きながら鼻をすする。
きっと励まして欲しかった訳ではないのだろう。
聞いて欲しかっただけ。
苦しい胸のうちを吐き出したかった。
誰か……、奈桜に聞いて欲しかった。


『いつか結婚出来るよ』と言いたいけれど、それがいつなのか分からない。
きっと、その『いつか』はずっと先。
奈桜のような奇跡が起こらない限り。


「あーーー。すっきりした。ありがとう。奈桜」


奏は前を向いてそう言うと、奈桜の方へ向いて笑った。
それはいつものみんなを笑顔にする奏スマイル。
奈桜の心にチクンと何かが刺さった。