~優しい腕の中~
「ただいまぁ。梓、いる?」
仕事を終えて帰って来た奈桜は、明るい声で梓を呼ぶ。
たまたま金曜日だったこともあり、娘の桜は奈桜の実家に預かってもらっていた。
今夜こそ、全ての疑問を解決しよう。
二人で話し合う。
本気でそう思っていた。
「……あず……さ?」
迎えてくれる笑顔がない。
靴があるから、いるはずなのに。
「梓!」
トイレのドアを開けると、ぐったりして壁にもたれて座り込んでいる梓がいた。
「どうしたの!梓!大丈夫?」
抱き起こした梓の顔は血の気がなく、体も以前より細く感じる。
腕に抱いた温もりはいつの間にかフワッと軽くなっている。

