「仮定の話、神川さんの話になってましたよ」


「……気のせいだよ。じゃ」


「カッコイイです。私には真似出来ないけど」


一瞬、笑ったように見えたが、神川はそれには何も答えずドアを開けて出て行った。


奈桜には味方が多い。
さとみなど太刀打ち出来ないほど、周りが固められているのかもしれない。


手が届かない。
いつまでたっても遠い人。
だから、『国民的アイドル』
『雨宮奈桜』


ふと手を伸ばしてみる。
握ってみても何もない。
何も掴んでないのが今の自分かもしれない。


「好きなのに」


激しい鼓動と一緒に、また涙が溢れて来た。