~孤立~
「神川さん!」
後ろから呼ばれた神川の口元がクッと上がった。
軽くため息が漏れる。
「その可愛らしい声は……さとみちゃん?」
表情をクルッと変えて笑顔で振り向く。
「神川さんって、意地悪ですね」
少しすねた目で、さとみが神川を見上げる。
さとみが可愛いという事に間違いはない。
周りの状況を全て取っ払ってしまえば、今すぐ抱きしめたくなるくらい可愛いコだ。
「どうしてそんな事言うの?オレ、なんかしたかな?」
「何もしてないから怒ってるんです。どうして電話に出てくれないんですか?ずっとかけてるのに」
「あ………あっ、お疲れ。昨日のドラマ観たよ。いやぁ、良かった。あの二番手のコ、いいねぇ。ちょっと興味あるなぁ。うん。じゃ。………えーと、ごめん。何の話だっけ?」
テレビ局の廊下では、まともに話は出来ない。

