「あの……ね、あの……。もう少し考えたいんだけど。無理なのは分かってるの。だけど……、少し考えたい」


「却下」


「えっ?」


あまりにも冷静に返されたので梓は驚く。
もっと食い付いて驚かれると思ったのに。


「もう。梓さんがそう言うのは想定内ですよ。やっぱりねぇ。そんなに奈桜さんと離れるのが嫌ですか?まぁ、ねぇ?あんなイイ男。私だったら魔法かなんかでこう、ちっちゃくしてポケットに入れて。絶対、連れて行くなぁ。あっ、でも、梓さんは別。梓さん自体が一流なんですから。奈桜さんは大丈夫ですよ。あぁ見えて、身持ちは固いですよ。きっと。梓さん、こんな仕事、次はないです。この仕事を蹴るバカな女優は世界中のどこにもいません」


いつの間にか梓のパンケーキも綺麗に平らげ、口元の生クリームもナプキンで拭われている。
店に入った時より顔が艶々に見えるのは、きっと青木の全ての源が糖分だからだろう。