「梓さん、映画の方、正式に決まったそうですよ。すごいですねぇ。なんか、監督の奧さまがやけに梓さんをお気に入りらしいですよぉ。早く会いたいって。ホテルなんかじゃなくてうちに泊まればいいって言ってるらしくて。それは無理ですよねぇ。息抜き出来ないもん。ねぇ~?梓さん?梓……さん?」


可愛らしいカフェの一番奥の席でパンケーキをパクついていた梓のマネージャー、青木の手が止まった。
口の周りには生クリームが美味しそうにくっついている。
少しぽっちゃりな彼女は甘いものに目がなく、しかもとろけるような表情で本当に美味しそうに食べる。
パンケーキも彼女に食べられればより幸せだろう。


「え?あぁ、えぇ。何?」


何か考え事をしていたのか話を全く聞いてなかったようだ。
梓のパンケーキは全く手付かず。
出されたそのままというのはなんか虚しい。


「もう。聞いてなかったんですかぁ。映画ですよ。ハリウッド。正式に決まったんです!」


生クリームがついた顔を梓に近付ける。