「私の気持ちが通じて。それで奈桜さんが私の所に来てくれたら。それは奈桜さんが選んだ結果です。今、側にいる人より、私を愛したという事。人の気持ちは変わるから。その時は奈桜さんを責めないで」


心は目を合わさず立ち上がる。
不機嫌さが体中に現れている。


「オレはそんな仮定の話はしない」


「えっ?」


「甘えるな。人の幸せな家庭を壊すつもりなら、全部、失う覚悟でやれ。今、手にしている物は、自分の物も相手の物も全て無くすと思え」


怒りに満ちた心の目がさとみを睨む。
心から見れば、この女こそ、本気で人を愛するという事が分かっていない。
自分勝手以外の何物でもない。


「それと。オレが本気で人を好きになった事がないだろって?……ないよ。だってオレはアイドルだから」


冷ややかに微笑んだ後、先に部屋を出て行く。
残されたさとみはしばらく動けなかった。