「俺、あの日優月と初めて話して、いい子だなって思ったんだ。

仲良くなって、それからすぐ好きになった。

でも、瀬名は…。

一目惚れだったんだ。

俺は優月の存在を知らなかったのに、アイツはとっくに優月を見つけてたんだ…」


あの海で、瀬名君は言った。


一目惚れだったって。


入学式の時からだったんだ…。


そんなに前から思ってくれていたの…?


「俺、瀬名の気持ちを知ってたのに。

瀬名が声かけようって言わなかったら、俺は優月と仲良くなれてなかったかもしれないのに…」


繋いだ手に雨が振り注いで、どんどん冷たくなっていく。


「それなのに、瀬名にあんなこと言って…。

俺、最低だよな」


「蒼甫君…」


「もし。

もし優月とひとつになれてたら。

俺、大丈夫なのかな」


ドクンと心臓が跳ねる。


「そうしたら、何の心配もなくいられるのかな…」


ひとつになるって…。


それはつまり…。


「でも、それって違うよな。

そんなこと言って、無理に優月に応じさせるのは間違ってる。

だけど、不安なんだ。

どうしたらいいんだよ。

本当にどうしたらいい?」


私はどう答えていいかわからないまま、蒼甫君と降りしきる雨を見ていた。