赤い流れ星

「ただいま!」



(あ……)



家の中に入った途端、私は玄関の見慣れない靴に気が付いた。
父さんのものじゃないことは、その靴を見て一目でわかったけど、それじゃあ誰の靴なんだろう?
シュウがはいてるものにちょっと似てる…



「おかえり、ひかり。
心配かけて悪かったな。
店の方は大丈夫だったのか?」

「うん、多分…
それよりも、シュウ……」

その時、シュウが答えなくとも、すぐに帰って来いと言われた理由がわかった。



「兄さん…どうして……」



そう、あの靴は兄さんのものだったんだ。
そういえば、もうじき日本に戻って来るとは聞いてたけど、でも、それにしたって、なんでここに?



「美幸、いろいろと聞きたいことがある。」

「……はい。」



最悪だった。
その場の雰囲気は、これ以上ないくらいに気まずいもので……



「ひかり、腹減っただろ?
……話は、夕食を食べながらしましょう。
今、すぐに準備しますから。」

「私も手伝う!」

私は、シュウを追いかけて台所へ走った。
なんで、なんで、兄さんが……
シュウにこっそり話を聞こうと思ったら、兄さんもすぐに台所に入って来た。



「和彦さん、そこに座ってて下さい。
お茶でも飲まれますか?」

「……いや、良い。」

シュウは兄さんの名前を知っていた。
多分、私が帰って来るまでの間に話したんだ、きっと。
兄さんの機嫌は明らかに悪い……

っていうより、兄さんに会うのはすごくひさしぶりだ。
前に会った時より、なんだか大人っぽくなってる…って、もう兄さんは三十代なんだから当たり前かもしれないけど、やっぱりイギリスでの暮らしが雰囲気を替えたのかも知れない。
なんだか、センスもより良くなってる感じ……

私は兄さんのことをちらちら見ながら、シュウの手伝いをした。
兄さんは腕を組んで、眉間に皺を寄せて厳しい顔をしていた。
これから、どんな話し合いになるのか、大概のことが予想が付く。
ごはんどころじゃないけど、兄さんもシュウもきっとお昼からなにも食べてないだろうし、私だってそうだから、まずはしっかり食べとかなきゃね……