赤い流れ星

「良かった、ぴったりだ!」

やっぱりシュウにはこういう服が似合うなぁ…
兄さんのはシンプル過ぎて真面目臭いっていうか、変に地味だから。



「ひかり…これ、高かったんだろ?」

「そんなことないよ。
そりゃあ、いつものよりは高いけど…普通だよ。」

「……嬉しいけど…もう今度からはこういうことはやめてくれよ。」

「え…」

「……ほら、こういうの着て行く場所もないし。
それに、これはひかりが一生懸命働いて稼いだ金だからさ…」

「あ……ご、ごめん……」

「何言ってんだ。
ひかりが謝る事なんてないだろ…ただ……」



ぎくしゃくしていた。
お互いが気を遣いすぎて、却ってうまく噛み合わない……
でも、私にはこの状態をどうにかする案は浮かばなかった。

シュウに喜んでほしくて買ったジャケットが却ってシュウを困らせてしまったことが辛かった。
そうだ…毎日、家事や畑仕事ばかりしている今のシュウには、おしゃれな服なんてあげちゃいけなかったんだ、きっと。
私は自分の配慮のなさに、打ちのめされるような気分だった。
これからはもっと考えて行動しなきゃ……



「ひかり…俺のことより、ご両親になにか贈ったらどうなんだ?
普通、初めての給料では両親になにか贈るもんだろ?」

「あ…そ、そっか……」

それはそうなんだけど、バイトのことは父さん達にはしばらく内緒にしておきたかった。
だって,万一、それで仕送りをなくされたり減らされたら困るもの。
今しばらくは内緒にして、その分、お金を貯めて…なんて考えてることを言ったら、シュウはやっぱり怒るだろうか?
きっと怒りそうだから、そのことは黙っておこうと思った。



そんなことより、私の頭の中はシュウへの贈り物のことでいっぱいで……
あぁ…こんなことなら腕時計の方が良かったかなとか、ジャケットの失敗をとり返すことは出来ないかとあれこれ考えていた。

そうだ…!
今月は無理でも,近いうちにどこかシュウの喜びそうな所へ旅行をしよう!
やっぱり都会が良いよね。
シュウの好きなビリヤードが出来る所とか…あとはショッピングとかして…何かのライブとかも良いかもしれない!

私はそんなことを想像して浮かれてて、シュウが寂しそうな顔をしていることにも気付いていなかった。