赤い流れ星







それからの一月は、今までないくらいに早かった。
バタバタしながらも、アニメさんはどうにかオープンにこぎ付け、初日にはどこにこれだけのアニメファンが潜んでたんだろうって思う程、大勢のお客さんがつめかけた。
私は裏方の仕事は良いんだけど、接客というのはとにかく大の苦手で……
レジの使い方はすぐに覚えられたけど、声が小さいとか愛想が悪いと何度も注意され、焦っておつりをばらまいてしまったり、いろんな失敗をやらかして、もうやめようかと思ったことも何度もあった。
でも、アニメのことで質問された時の答え方がすごく良かったと店長さんにほめられることもあって、それからは何か質問される度に私が呼び出されるようになった。
まさか、アニメの知識が仕事の役に立つことがあるなんて今まで考えてもみなかったけど、そんなわけでけっこう重宝がられるようにもなって、それをきっかけにお客さんとも割りと話せるようになってきた。

シュウともなんとなくうまくいってる。
朝はバス停まで自転車で送ってもらって、帰りは自転車で町まで迎えに来てもらう。
バスは7時のしかないから、バイトの時間を7時前までにしてバスで帰るようにするかどうか、今、二人で考え中。
その方がシュウの負担は軽くなるけど、シュウとの時間は短くなる。
そうでなくても、以前と比べると一緒にいる時間がはすごく短くて、それはけっこう寂しいことだから。







「おいしいね!」

「やっぱり良い肉は違うな!」

初めてのお給料が出た日、私達はいつもよりも高い肉を買って、家で焼肉を食べた。
本当は食べて帰ろうと思ってたんだけど、値段を見て、家で食べようってことになったんだ。



お給料は私が思ってたよりも少し多かった。
いつもの父さんからの仕送りの倍以上あって、私は明細を見てびっくりした。
これからは、今までより少し楽な生活が出来ると思うと嬉しかったけど、あんまり嬉しそうな顔をするのもなんだかシュウに悪いような気がして、お給料の話はあえてしなかった。



「シュウ…これ……」

私はシュウにジャケットをプレゼントした。
シュウが迎えに来る前に買っておいたもので、このあたりで着てたらちょっと目立ちそうなジッパーのいっぱいついた黒いジャケット。
お給料が出たら、シュウに服をプレゼントしようと決めていて、休憩時間なんかに下見してたんだ。



「ひかり……」

「ね、着てみて!
多分、サイズは大丈夫だと思うけど……」

戸惑うシュウを急きたてて、ジャケットを羽織らせてみると、それはシュウにぴったりだった。