赤い流れ星





悩んだけど…朝までずっと考えたけど、とりあえず、開店までは人手がいるだろうし……
私なんかでもいないよりはマシだろうから、バイトに行く事にした。
実をいうと、シュウと二人っきりで家にいたくないっていうのもあった。
ウィンナーと野菜を炒めるくらいなら私にも出来るから、私はそれで簡単なお弁当を作って行くことにした。



「おはよう。
今日は早いじゃないか。」

「え…あ、あぁ……」

そこには、いつもと変わらないシュウがいて、朝ご飯の用意をしてくれてた。



「早く、顔洗って来いよ。」

「う……うん!」



でも、シュウはやっぱりいつものように私の顔を見ることはなかった。
フライパンで何かを炒めながら、ずっとそっちを見てる。



そうだよね……
いくら、気持ちの切り換えが早いシュウでも、そんなに早く切りかえられるわけがない。
昨夜、あんなことがあって…そして、それはまだ解決していないんだもの。



「ひかり、今日はバスで行け。
帰る時間がわかったら、早めに知らせてくれよ。
俺、迎えに行くから。」

「そんなこ……うん、わかった。
そうする。」

そんなことしなくて良いって言おうとしたんだけど、そこで私は思ったんだ。
シュウにもなにかやってもらった方が良いって。
そうでないと、シュウはきっと気持ちの負担が大きくなるから。
迷惑をかけるのは気がひけるけど、きっとそうする方が良いんだ。



バス停まではシュウが自転車で送ってくれた。
お弁当もちゃんと作っておいてくれた。



「ひかり…俺……まだ完全に乗り越えられたわけじゃないけど…
でも、今は受け入れるしかないんだと思う。
しばらくこの状態を続けて…そのうちに何か思いつくかもしれないし、思いつかないかもしれない。
おまえには苦労させるけど…ごめんな…」

バス停までの道すがら、シュウがぽつりと話した。



「苦労だなんて!そんなことないよ!
私、アニメさんが大好きだし…バイト採用されたことも嬉しいし…
それに…それに、私……」



「シュウのことが好きだから。」



昨夜は言えたのに、今日はなぜだかその一言が言えなかった。
恥ずかしい……
でも、言わなきゃ…!

もう一度勇気を振り絞って言おうとした時、不意に自転車が止まった。



「じゃ、気を付けてな。
町までけっこう時間がかかるんだから、帰りの時間がわかったら早めに連絡するんだぞ。」

シュウはそう言って、お弁当の入った手提げを私の前に差し出した。