赤い流れ星

「ほら、見ろ。
困ったらいつもそうやって泣くんだ。
……なにも出来ないくせに、偉そうな口きくんじゃない!」



酷い……
いくらなんでもひど過ぎる……
シュウは、普段から口は悪いけど、こんなきついことを言う人じゃなかったのに……
私の心はずたずたに引き裂かれ、涙はますます激しく流れ始めた。



もうおしまいだ。
シュウの言う通り、私は非力だ。
私に出来ることなんてないし、私にはもう……



泣きながら、私の頭の中には今までのことが思い出されていた。
初めてシュウがここに来た日のこと……
そして、それからの二人の生活……
最初は怒られてばっかりで…でも、それは私がなにも出来なかったから。
シュウが来なかったら、私は今もずっとあんな風で……
特に何かを考えることもなく、何かに頑張る事もなく……
それは今よりずっと楽な暮らしだったかもしれない………だけど……



それで良い筈がない……
どんなに辛くとも苦しくとも……
きっと、今の方が良い状態なんだ。
だって…私は少しずつ変わってきてるんだもの。
今まで出来なかったことがちょっとずつ出来るようになって来てるんだもの。

これは、シュウのおかげなんだ。
それに…悪いのは私なんだから……
泣いてもどうにもならないんだから……
現実と向き合うって決めたのは、私なんだから……
だから……逃げちゃいけない……



「……シュウ」

頭の…いや、心の整理が少しついた私は、ふと顔を上げた。
腫れ上がった頬に流れる涙を拭い、苦しくなった息を整えながら、シュウを見た。
まだ焦点のはっきり合わない私の目に映ったものはシュウの背中で……
その肩は小さく動いてた。



(シュウが……泣いてる……)



胸が締めつけられる想いだった。
シュウのさっきの言葉は、私ではなくシュウ自身を傷付けていたんだと気が付いた。
見知らぬ世界で、まるで鉄の鎖でがんじがらめにされているような状況で……
思うように動けないことで、苦しんでるのはシュウなんだ。
シュウは、私なんかよりずっと辛い想いをしてるんだ。