赤い流れ星

(やだなぁ…真っ暗だ……)

考えてみれば、こんなに暗くなってから外に出ることはこのごろ全くなかった。
何度も通った道も、暗いといつもとは違って見える。
自転車を走らせているうちに、シュウに電話をかけ忘れていたことを思い出し、道路の傍に自転車を停めて私はシュウに電話をかけた。



(どうして……?)

何度かけてもシュウは電話に出なかった。
空しく響く呼び出し音に、私の胸には不安が広がる。

もしかしたら、シュウは怒って電話に出ないんだろうか?
さっき、あんな風に電話を切ったから……

とにかく早く帰ってシュウに謝ろう…
その前にバイトのこともちゃんと話さなきゃ…

様々なことを考えながら、私は再び自転車を走らせた。
民家の集まるあたりに来ると、少し明るくなって、それで気持ちも少し落ちついた。
でも、この先には林道がある。
昼間でも寂しい場所なのに、こんな暗い時間にあそこを通るのかと思うと、また気持ちが落ちこんだ。
だけど、そんなことを言っていたら家に帰れない。



(歩いて通ることを考えたらずっとマシよ!)

私はそう考えて、無理に勇気を奮い立たせた。



(平気…平気…こんなのなんてことない!)

自分にそう言い聞かせ、あたりの暗さをなるべく気にしないようにして、私はいつもより力をこめて自転車を漕ぎ出した。
真っ暗な道では、自転車の小さなライトの光だけが頼りだ。
小さいとは言え、これがなかったらもっとずっと怖かっただろうと思う。



その時、向こう側から誰かの懐中電灯らしき明かりが近付いてくるのが見えた。
人がいるという安堵感と同時に、おかしな人だったらどうしようという恐怖心がわきあがる。
何かあったらすぐに逃げられるように、その明かりとは逆の方の端っこを走る。
でも、道幅はそんなには広くない…
もしも、相手がおかしな奴で、しかも素早く力の強い奴だったら……
そんなことを考えると、なおさら私の不安は大きくなって叫び出したいような気持ちになった。
明かりはどんどん近付いて来る……

その時、相手の懐中電灯が明らかに私の顔を直撃し、一瞬、目が眩んで私は何も見えなくなった。