その後、オーナーはすぐにサユ達が以前住んでいたアパートに向かった。
そこは街外れの古びた木造アパート。
弟は家賃を滞納していた。その分までも肩代わりして支払い、今月まではまだ部屋は使えるが、サユはオーナー達の家へすでに引っ越している。
今や誰もいない…静かな部屋。
サユから鍵を預かっていたため、オーナーは中に入ってみた。
綺麗に片付いている無機質な室内。
しかし…どことなく鼻につくような異臭が辺りに漂っている。
台所を覗くと食器類は見当たらず、普段…冷凍食品やコンビニ弁当などで生活していたことがうかがえた。
その代わり…二人暮らしには不釣り合いな大きさの圧力鍋と、まだ新しいマナ板と包丁が無造作に片付けられていて不思議に思った。
そこで違和感を覚える。
一ヶ月前…サユがカレーを作りすぎて二人では食べ切れないからと、オーナー一家へタッパに入れておすそ分けをしてくれた事があったのを思い出した。
ちょうど…
その後サユの父親は失踪している。
不自然だらけな台所。
炊飯器と食器類が見当たらないのに、何故カレーなんてサユは作ったのだろう?
―――…急激な吐き気に襲われた…

