異常な僕等はイタッテ正常


―――――日曜日。



あの日、ケンイチとサユのバイトが終わったあと、サユに今後の生活の事や失踪中の父親の件について少しだけ話をしたようだ。



きっと孤独で辛いだろうから、父親が見つかるまで全面的に協力してあげるつもりで、何か心配事や必要なものがあったら遠慮なく頼ってほしいと…サユに伝えた。



「有り難う…おじさん!」



満面の笑みで答えるサユ。



意外とケロッとした返事だったため一瞬とまどったオーナーだが、サユなりに強がっているのだろうとその時は感じたらしい。



「早く見つかるといいな。」



そうオーナーは言いながら気遣ったのだが、サユの表情を見ていたら…少しだけ…奇妙な感覚を受けたらしい。



「おじさんは心配しないで。
ア・イ・ツがたとえ
見つからなくても私は平気だから。」



それはそれは…



とても幸せそうに笑っているのだ。



オーナーの気遣いに対してでは無い…



ナニかから解放されたかのような…



爽快な笑顔。



「もし…見つかったらどうする?」



オーナーはためらいつつも聞きたくなった。



聞かなくてはならないと感じた。



サユは一瞬黙り込んだあと…



真っ直ぐな瞳で答えた。



「その時は…覚悟を決める。」



流れる沈黙………。



諦めにも似た感情がわき、オーナーはサユの言葉の裏に隠された【意味】をさとった。




(ああ…もうア・イ・ツはこの世に…)



何も話すことが出来なくなり、用件は一応ここで終了。サユがケンイチと遊びに行くと言ったため待たせては悪いと思い、とりあえず見送った。