俺ががきんちょだったころの缶珈琲といえばあまったる~い砂糖ミルクたっぷりの味だったけどなぁ。

 ま、あれはあれで懐かしくて味わい深いがね。

「あちち……」

 春先はホットが入っている自販機もほとんどないけど幸いこの自販機にはいまだ健在。

 でもほとんど買う人がいないんだろうな、これでもかってくらいに熱いのなんの。

 ずっと持ってたら火傷するんじゃないか? これ。

 しばらくホッカイロ代わりにして手をあっためるとしよう。

 ちょっと腰もおろすかな。

「ふぅ……」

 自販機の横にしゃがむと、じんわりと膝小僧あたりから疲れが広がっていった。

 やがてそれが頭の毛先にまで達すると俺の意識は徐々に内側に向いていき、視線は前を見ているにもかかわらず、何一つ瞳には映さなくなった。

 昼間にぼぅ、っとするのと夜にぼぅ、っとするのとじゃ働きが違う思考回路。

 昼はいろんなことに空想や想いを巡らしたりするもんだが夜は一つのことを突き詰めるように考えを掘り下げていく。