面倒なことってのは重なるもんだな。

 いっそこのまま無視してやろうかとも考えたが、紳士な俺は結局男を待つことに。

 数分後。

「いやぁ、おまたせ。これをおすそわけしようと思ってね」

 そういって男が俺に手渡したのは、なにやらイイ香りのする小さな布の巾着。

 たしか“ちりめん”だったか、それは片手にすっぽりとおさまるくらいの大きさで、どうやら少しだけ開いた口からそれは香っているようだった。

「ポプリっていうやつ。知らないかな?」

 物珍しげに袋のにおいを嗅いでいた俺に男がいった。

「あぁ、これが。聞いたことはありますけど……」

 で?

 なに?

 随分と女の子なモン持ってんな、この人。

 しかもなぜだか得意気な表情。