肺の中の空気を全部抜いた俺は天をあおいで大きく新しい空気を吸い込んだ。

 視線の先には心中をあらわすかのようにどんよりとした雲が拡がっていて、切れ間のないその雲は月の存在をすっぽりと隠し、そのせいか流れているのかそうでないのかよくわからない。

 それでも、どこからか漏れ出している月明かりがぼんやりと、そこに雲があるということを教えていた。

 それがなければ、ただ月も星も出ていないだけなのかと思ってしまったことだろう。

「皮肉かよ……」

 わけのわかっていない俺とは違って、お天道様はなにかもかも見透かしてるんだぞといわれているような気がした俺は愛車を停めて土手に座り込んだ。

 なんだかひどくみじめな気分になってきたな……。

 そもそも、だ。

 女という生き物ってやつはよくわからない。

 いや、そりゃまぁ性別が違うわけだから理解のできない部分があるってことは当然だ。

 うん。

 ただそれを差し引いてもだな、俺にはよく理解できないことばかりだ。

 例えば、数分前まで上機嫌だったかと思えば、くるりとターンを決める間にいつの間にか不機嫌極まりないって態度をとる。

 いやいや、そりゃまぁ不機嫌になるってことはそれなりの理由があるんだろうよ?

 うん。

 ただ、ね。

 その理由を口にしないまま「そのくらいわかってよね」という態度をとられるから困るんだ。

 ほら、そこのあんた。

 覚えがないかい?