「なんで、謝るの?」 「あなたの機嫌を損ねましたから」 「損ね……」 「私の言葉に怒ったんでしょう」 言われ、カルツは胸の内を探った。 怒る?何に、なんで? その様子に、“猫”はため息をつく。 「本当に、絵本の中の住人なんですね」 これ以上、口にすればまた撃たれかねないと思うが――空っぽを埋めてやらねば、あまりにも“空しい”だろう。 「図星をつかれたからって、怒らないで下さいよ。自身の事に乏しくとも、生きていれば、嫌でも様々なことを――肌から感じるでしょうから」