(一)


クラストという灰色の無法地帯(街)で、死体を見ない日はない。


単なる“通り道”として、カルツはその日、その場にいた。


夜の通り雨。
廃れたビルで雨風を凌ごうと思うが、ごろつきに絡まれては面倒だと、カルツは傘もささずに歩いていた。


規則正しい歩調に歩幅。夜目を利かして歩いてみるも、その規則正しさが崩れたのは雨のせいだった。


「……」


つまずいた。
転ぶまでには行かないが、立ち止まる。

雨のせいで視界不明瞭。コンクリートの瓦礫でもあったかと見れば。