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「季沙名(きさな)、ホットとアイスどっちがいいんだ」


喫茶店にて、私にそう尋ねる彼氏に「ホット」と答える。


10月という寒さ暑さも中途半端な気温を考慮しての問いだが、カウンターに頼みに行く彼の後ろ姿を見ながら思う。


――浮気でもしたのか?


いきなりデートしたいと言い始めたかと思えば、やけによそよそしく、ああして気を使う。


喫茶店に入るなり、私が座る椅子を引き、「注文取ってくる」とセルフの面倒ごとを買って出るのを見てしまえば、嫌でも察する。


まだ付き合って一ヶ月ほどだが、私が彼に持つ印象は「彼氏の部類として最低ランク」だ。


よくキレるし、時間にルーズかと思えば、私が待ち合わせに遅れようものなら公衆の面前で大口唾飛ばし説教。


友人に、「なんで別れないの?」と会う度言われるほどの彼氏だが。