その言葉は別に誰に向けられた訳でもなく、むなしく白い息と共に闇へと消えた。






『だって、私を捨てたこと後悔してるって言うんだもん。その言葉を信じた訳じゃないけど、信じたかった。



私、ずっと自分が嫌いだった。お母さんに捨てられた私なんて、好きになれなかった。だから、私……私が、生まれてきたのは間違いなんかじゃないって思いたかっーー』




「間違いなんかじゃないに決まってるだろ!」








ほんとは有紗が話終えるまで黙ってようと思ってた。



だけど、無理だった。




何でそんなこと言うんだよ。

何でそんな悲しいこと言うんだよ。







『…樹くんっ……』






俺を呼ぶ有紗の声に、どうしようもなく泣きたくなった。



有紗はずっとそんな思いを抱えながら生きてきたのだろうか?