「今、虎のここに誰がいるのか。もう1度で冷静に考えてみたら?」
そう言うと、葵ににこりと微笑んだまま、2杯目のビールを飲み干した。それきり、その以上の質問をすることはなかった。
ニュージーランドへ旅立つ葵をCityの駅のホームで見送った。葵がバイト先で知り合ったというシェアメイトはひょろりと背の高い、いかにも人の好さそうな笑顔を浮かべた男だった。
年令も同じで、関東近郊に住んでるとのことだった。葵から紹介されると、「話によく聞いてるよ。会えて嬉しいよ」とフレンドリー全開でがっちりと握手をされた。
若干、ウザくて暑苦しそうな男だったが、何か憎めない所があった。
「Have a nice trip.」
電車に乗り込む彼らを見送ると、「おぉ、やっぱ、発音いいねー」とシェアメイトはthumbs-upのポーズをする。苦笑いで手を振ると、
「じゃあ、今度会う時は、虎のシェアハウスでね。久しぶりの家族団らん、楽しんで。よい年末を~」
穏やかな笑みを浮かべて、葵は旅立っていった。扉が閉まり、ホームに残る俺が見えなくなるまで、手を振っていた。
「今度会う時は、俺のシェアハウスで……か」
I want to be honest with you.
Sigh……
ジーンズのポケットに両手を突っ込むと、人でざわめくホームを後にした。

